創業者の過去 その3
退職金三十三円二十銭、積立金四十二円、合計七十五円二十銭と貯金が二十円余り、それが手持ち資金のすべてだった。
機械一台、金型一つを買っても百円は飛んでしまう。
しかもなんの技術もなければ、売り先のあてもないのだから、無謀というほかはなかった。
幸之助は、自分よりすこし前に会社をやめていた林を誘い、さらに森田という同僚も希望したのでいっしょに事業をすることにして、ソケットづくりに乗り出した。
ところが、困ったことにソケットの原料が何と何で、それをどうすればよいのかという、基本が分からなかった。
よくまアこれで独立できたものだが、なんとかなるだろうと思うばかりで、そのくせすぐ壁にぶつかってしまったのです。